年末の作業として企業は、12月の給料日までに従業員の年末調整手続きを進める必要があります。国民全員に必要な納税の義務なので、漏れや抜けを確実に防止することが大切です。ただし、2022年年末調整には複数の変更点があるため、例年通り対応ができないのをご存じでしょうか。
この記事で紹介する年末調整の変更点や作成時に気を付けるポイントは、従業員を抱える経営者や労務作業にかかわる方すべてが理解しておくべき項目です。内容についてご説明します。
2022年年末調整の変更点
2022年年末調整で変更が加わった項目は、合計6つあります。手続きの方法や従業員全体、また従業員の一部に関わりがある変更点です。
年末調整では、従業員の家族構成や収入、控除対象を把握することが大切なので、各項目の変更点について解説します。
①一部書類で押印が不要に
国税庁から公開された「令和3年年末調整のしかた」より、2021年の年末調整から一部書類で押印が不要です。2022年の年末調整についても、次に示す項目で押印不要となります。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
- 住宅借入金等特別控除証明書(住宅ローン控除証明書)
ただし、上記項目に該当しない年末調整書類では、例年通り押印が必要です。
②年末調整の書式が変更される
国税庁の「[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告」より、次に示す年末調整の書式が変更されています。
- 給与所得者の基礎控除申告書
- 所得金額調整控除申告書
2種類の申告書は、今まで提出が必要だった「給与所得者の配偶者控除等申告書」と組み合わさり「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という新様式での提出が必要です。
当申告書は、基礎控除額の適用判定で用いられるため、配偶者の有無に関わらず従業員全員に提出義務があります。
③基礎控除の見直し
基礎控除額の変更点として、一律38万円として設定されていた控除額が引き上げられ、一律48万円へと見直しが行われています。ただし、高所得者(年収2,400万円以上)の場合は以下に示す逓減された控除額が対象です。
合計所得金額 | 控除額(変更前) | 控除額(変更後) |
2,400万円以下 | 一律38万円 | 48万円 |
2,400万円を超え2,450万円以下 | 32万円 | |
2,450万円を超え2,500万円以下 | 16万円 | |
2,500万円を超える | 控除対象外 |
参考:国税庁「基礎控除」
また、住民税についても控除額33万円から43万円と10万円の引き上げが実施されています。
④給与控除の見直し
基礎控除が引き上げられたことによって国民の税負担額が減少することに伴い、給与控除が一律10万円引き下げられています。
給与等の収入金額 | 控除額(変更前) | 控除額(変更後) |
180万円以下 | 収入金額×40% ※65万円未満は65万円 |
収入金額×40%-10万円 ※55万円未満は55万円 |
180万円を超え360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円を超え660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円を超え850万円以下 | 収入金額×10%+120万円 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円を超え1,000万円以下 | 195万円 | |
1,000万円を超える | 220万円 |
参考:国税庁「給与所得控除」
⑤ひとり親控除の新設・寡婦(寡夫)控除の見直し
子を持つシングルマザー(ファザー)を対象とした「ひとり親控除」の新設と、既存の控除項目である「寡婦(寡夫)控除」の一部見直しが行われています。主な変更点は次の通りです。
ひとり親控除の対象者
- 生計を一にする子がいる(総所得金額等の合計が48万円以下で同一生計の子)
- 合計所得金額が500万円以下である
- その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
ひとり親控除の控除額
- 所得税35万円
- 住民税30万円
また、寡夫控除については、ひとり親控除に吸収されています。一方、寡婦控除はひとり親控除と別のものとみなされ、所得税27万円、住民税26万円の控除が個別対象です。
2023年年末調整の変更点
2022年年末調整の変更点に併せて、2023年年末調整でも変更が加わります。
納税対応は早めの対応が必要です。2023年の変更点も従業員と深く関わりのある項目なので、詳しくご説明します。
①住宅ローンの控除率・控除期間が変更される
2023年の年末調整より、住宅ローン減税の控除率・控除期間が変更されます。本変更は新型コロナウイルスのまん延による経済回復を図る目的で設けられた改正です。
国土交通省から発表された「住宅ローン減税等が延長されます!~環境性能等に応じた上乗せ措置等が新設されます~」によると、次に示す変更が加わっています。
- 2022~2025年末までの入居の場合、控除率が一律1.0→0.7%に変更
- 新築住宅等の入居に対し、控除期間が原則10→13年に変更
- 減税期間が2022年12月→2025年12月までに変更
控除額、控除期間が変更になったことに伴い、長期ローン返済における負担額が減少します。住宅の種類や借入限度額により変更するのが特徴です。
②社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除が電子化される
すでに進行している年末調整の電子化において、2022年より「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」も加わっています。
各控除証明書は、次の通り電子データとしての提出が必要です。
示に代えて、その証明書類等に記載されるべき事項が記録された情報で電子証明書等が付されたものを保険料控除申告書に記載すべき事項と併せて電子データにより給与の支払者に提供できるようになりました(24ページの「小規模企業共済等掛金控除」の証明書類においても同様です。)。”
【引用】国税庁「令和4年 年末調整のしかた」
年末調整で気を付けるポイント
世の中の経済状況や増税の影響を受け、今後も年末調整の内容に変更が加わっていくことが予想されます。大切なのは、継続して納税方法の動向を探ることです。
企業が実施する年末調整の中で、気を付けるポイントを2つご紹介します。
各種手続きの変更点を報道・広報からチェックしよう
年末調整の最新情報は、「国税庁HP」からチェックできます。企業がやるべき納税方法のリサーチは、トピックスや税の情報を定期的に確認するだけです。
国税庁HPには、年末調整の基礎知識やQ&Aも掲載されています。年末につまずくことなく年末調整を実施するためには、報道や広報チェックが必要です。
年末調整のプロに相談しよう
年末調整の最新動向や年度ごとの対応に迷っているなら、年末調整のプロに相談するのがおすすめです。納税額や控除額には、複雑な条件が設けられています。
安心して年末調整を進めるためにも、分からないことがあれば、まずは労務士法人などに相談してみましょう。
2022年年末調整の不安はFORROUに相談しよう
2022年の年末調整では、全従業員にかかわる基礎控除や給与控除、一部従業員がかかわるひとり親控除などの対応が必要です。また、2023年にも年末調整の変更が加わります。
しかし、年度ごとに対応するのが難しいと悩んでいる会社も多いでしょう。
もし2022年の年末調整でお悩みなら、労務作業のプロ「FORROU」にご相談ください。
無料相談もお受けしていますので、お気軽にご利用くださいませ。