年金事務所の調査は、会社が社会保険の手続きを正しく行っているかを確認するために実施します。
「年金事務所から調査通知書が届いたけれど何を聞かれるの?」と心配されていませんか。
日頃から手続きを正しく行っていれば、心配は不要です。
本記事では、日本年金機構が発表した『令和4年度業務実績報告書』の数字も取り入れて、年金事務所で実施される調査概要を解説します。
この記事を読むと、社会保険担当者として年金事務所の調査への対処法が分かるようになります。
ぜひ最後までご覧ください。
年金事務所の調査とは
年金事務所の調査は、大別すると2つの調査に分かれます。
- 未適用事業所の調査
- 適用事業所の調査
以下で調査の目的と年金事務所調査時の必要書類について解説します。
調査の目的
調査の主な目的は下記の2つです。
- 会社が社会保険の手続きを正しく行っているか
- 手続き漏れなどの指摘と誤りがあれば改めるよう指導する
適用事業所の調査では、社会保険に加入している適用事業所が適正な社器保険手続きを行っているかを見るものです。
総合調査とも呼ばれています。
年金事務所が確認した結果、手続き漏れなどがあれば必要な指摘をし、誤りがあれば改めるよう指導することも調査目的の1つです。
また、社会保険に未加入の未適用事業所に対し、事業所に適用の促進を行うことも多々あります。
『令和4年度業務実績報告書』では「未適用事業所の更なる解消に向けて」「国税源泉徴収義務者情報等を活用し、文書・電話・訪問等の加入指導を行いました。その結果、合計で約9.6万事業所、約18.3万人を適用に結び付けました。」との記載もありました。
必要書類
年金事務所の調査に必要な書類は「調査通知書」に記載されている通り、下記の書類が必要になります。
調査の直前に慌てることのないように、早めに準備しておきましょう。
- 調査票
- 労働者名簿
- 賃金台帳(過去2年間分)
- 出勤簿またはタイムカード(過去2年間分)
- 源泉所得税の納付書
特に年金事務所から、用意するように連絡があれば別途準備しておく必要があります。
年金事務所の総合調査と新規適用届の概要
年金事務所の定期的な調査には、総合調査などがあります。
新規適用事業所に該当する場合には、新規適用届の提出が必要です。
ここでは以下の2点について解説します。
- 総合調査
- 新規適用届
6月〜7月は年金事務所の社会保険の総合調査が増加
年金事務所が定期的に実施する、社会保険事務の調査を総合調査といいます。
年金事務所が実施する総合調査で確認することは、社会保険に関する以下の点が中心です。
- 社会保険の取得漏れ
- 標準報酬月額が適切か
- 被保険者の取得日は適切かなど
また、2023年度の算定基礎届は7月10日が提出期限です。
実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が出ないように、事業主は基礎算定届を毎年提出する必要があります。
基礎算定届により7月1日現在で使用している全ての被保険者に支払った、4月〜6月の賃金を事業者が届出をする必要があるため、かなりの件数にのぼります。
基礎算定届の提出に合わせて、総合調査が実施されることも多いようです。
2022年度には郵送等で被保険者数約699万人、約16.8万事業所に対し事業所調査が実施されました。
年金事務所では、6月〜7月に社会保険の総合調査が増加します。
新規適用届の注意点
新規適用届は、事業所が新たに健康保険・厚生年金保険に適用されることになった際に提出する届出のことです。
新規適用届と合わせて、被保険者となる人の全てについて『被保険者資格取得届』 と、被扶養者がいる場合には 『被扶養者(異動)届』 も提出しなければなりません。
新規適用届には、届出説明書類が多いことも注意点の1つです。
事業所の社会保険担当者が事業所代表を伴って、何度も年金事務所へ行き来することがないように、届出説明書類を熟読するとともに下記で添付書類をチェックしておきましょう。
様式自体は、全て年金事務所に揃っており、インターネットでダウンロードできるものが多くなっています。
どのような事業所か等 | 添付書類 |
法人事業所 | 提出日からさかのぼって90日以内に発行された法人(商業)登記簿謄本 (事業所の所在地が登記上の所在地等と異なる場合は賃貸借契約書写しなど事業所所在地を確認できるもの) |
事業主が国、地方公共団体又は法人 | 法人番号指定通知書の写し |
強制適用となる個人事業所 | 提出日からさかのぼって90日以内に発行された事業主の世帯全員の住民票原本 |
共済組合制度(短期給付)に加入する事業所 | 共済組合の証明を受けた「共済組合制度(短期組合員)の適用に伴う健保法第200条等の適用申出書」 |
口座振替により保険料納付を希望する場合 | 「健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書」 |
年金事務所の調査への不安
年金事務所の調査があると聞いた以上、不安に思われる方も多いでしょう。
年金事務所が確認するポイントは、下記のとおりです。
年金事務所の調査に不安がある場合は、事前に確認しておくとよいでしょう。
- 健康保険や厚生年金保険に関する手続きが適正か(主に算定基礎届や月額変更届など)
- 賃金台帳などと照らし合わせて報酬と標準報酬月額に大きな乖離がないか
年金事務所の調査は、これらの点をチェックすることが目的です。
普段から手続きや届出を適正に行っていれば問題ないといえます。
ただし、指摘事項があればできるだけ速やかに対処しましょう。
年金事務所調査に関するよくある質問
年金事務所の調査に関してよくある3つの質問に答えていきます。
- 年金事務所の調査とは何ですか?
- 年金事務所の調査の流れは?
- 年金事務所の調査はいつですか?
年金事務所の調査とは何ですか?
年金事務所の調査は、事業所が適正な社会保険手続きを行っているかを確認することです。
社会保険の手続き漏れや手続きに関して誤りがあれば、改めるよう指導を受けます。
年金事務所の調査の流れは?
年金事務所の調査の一般的な流れは下記のとおりです。
- 事業者に調査通知書が届く
- 必要書類を準備の上で年金事務所へ郵送または持参する
- 社会保険の手続き漏れなどがないか調査を受ける
年金事務所の調査はいつですか?
年金事務所の調査は、社会保険の総合調査であれば6月〜7月に実施されることが多いといえます。
基礎算定届の提出時に合わせて実施することが多いためです。
年金事務所の調査頻度は、約3年〜4年に1度実施されるといわれています。
新規適用事業所であれば、届出から約6カ月〜1年後に1度実施されることが多いようです。
まとめ:年金事務所調査とは?
年金機構発表の業務実績報告書から調査概要解説
ここまで年金事務所の調査と調査概要について解説しました。
調査にあたっての必要書類も多く、社会保険担当者にとっては頭の痛いところです。
日頃から手続きを適正におこなっていれば、特に問題はありません。
下記の点は、年金事務所のチェックが入りやすいため気を付けておきましょう。
- 社会保険の手続きを正しく行っているか
- 調査に必要な書類は揃っているか
- 算定基礎届は提出できる状態か
- 新たに健康保険・厚生年金保険に適用されることになった場合、新規適用届を提出したか
小規模な年金事務所では、厚生年金保険の適用関係の諸届出を担当する厚生年金適用調査課でなく、厚生年金保険料の納付相談なども合わせて行う厚生年金適用徴収課が年金事務所の調査を行っています。
事業所の管轄が小規模な年金事務所の場合には、必ずしも社会保険調査担当の専任者でない場合もあり得ますので、事前にしっかりと準備しておきたいものです。
また、普段から手続きや届出を行っていない事業所は注意が必要です。
早めに専門家に相談しておく必要があります。
年金事務所の社会保険調査は、社労士事務所に相談すると色々相談に乗ってくれます。
お近くの社労士の先生にご相談ください。