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賃金デジタル払いはすべての電子マネーに対応?導入時のメリット&デメリットとあわせて注意点も解説

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2023年4月より、”労働基準法施行規則(第7条の2)が改正され、賃金(給与)のデジタル払いが、可能になったことをご存じでしょうか?

デジタル払いとして電子マネーが決済アプリに振り込まれることで、銀行口座に振り込まれるよりも、支払いの利便性が高まり、手数料の負担が少なくなるといったメリットがあります。

本記事では、

  • 対応する電子マネー
  • 賃金デジタル払いがすすめられる理由
  • 導入時のメリット&デメリット
  • 賃金デジタル払いを検討すべき会社や業界について
  • 導入するための手順

について、解説いたします。

会社(雇用主)、従業員ともに便利な一面がある反面、導入時には注意点もあるため、当記事を参考にしていただければ幸いです。

賃金(給与)デジタル払いはすべての電子マネーに対応?

2023年6月時点では、指定資金移動業者のみが対象となっています。

理由としては、現金への換金や出金が可能なためです。

指定資金移動業者とは?:QR決済会社が対象

  • Pay Pay
  • LINEペイ
  • メルペイ

などのスマートフォンのQR決済会社を指します。

指定資金移動業者が倒産したら預けたお金はどうなる?

利用者資金の保全規制により、指定資金移動業者に預けたお金(電子マネー)は保護されています。そのため、指定資金移動業者が倒産しても、利用する側がお金を失うことはありません。

賃金デジタル払いに対応できない電子マネー

賃金デジタル払いに対応できない電子マネーとしては、つぎのものがあげられます。

  • 仮想通貨
  • 現金化できないポイント
  • 流通・商業系の電子マネー(SuicaやPASMOなど)
  • 後払い形式の電子マネー(IDやQUICPayなど)

いずれも、現金への換金や出金ができないため、賃金の支払いとしては認められていません。

賃金(給与)デジタル払いがすすめられる理由3つ

1.デジタル化促進によりキャッシュレス決済を普及させるため

経済産業省としては、2025年6月までにキャッシュレス決済の普及率を40%、将来的には世界最高水準の80%を目指しています。

2022年における経済産業省のデータでは、キャッシュレス決済の普及率が

  • 韓国:93.6%
  • 中国:83%
  • 日本:32.5%

となっており、日本は世界だけでなく、アジア圏においても一歩遅れているのがわかります。
生活様式の変化により、世界中でキャッシュレス決済が加速している以上、日本国内でも対応が求められるでしょう。

2.現金の取扱いによる時間的コスト・人件費の削減

2つ目の理由としては、現金の取扱いによる時間的コスト・人件費の削減があげられます。

今後、インバウンドによる訪日外国人が増えることが予想されているなか、キャッシュレス決済に対応できていなければ、大きな損失にもつながりかねません。

前項目とかさなりますが、世界中でキャッシュレス決済がひろまっている以上、日本としては変化に対応していく姿勢が求められるでしょう。

3.賃金(給与)の受け取りについて資金移動業者の口座に一定のニーズがある

3つ目の理由としては、キャッシュレス利用者のうち4分の1程度は「給与デジタル払いが可能になったら、制度を利用したい※」と回答しているためです。

※厚生労働省が発表した”資金移動業者の口座への賃金支払について“資料40ページより

一定のニーズがあることから、今後は賃金のデジタル払いが進む可能性は、十分に考えられるでしょう。

賃金(給与)デジタル払いのメリット&デメリット

スマホで気軽に利用できるQR決済ですが、賃金(給与)の支払い・受け取りにはメリットだけでなくデメリットもあります。

会社(雇用主)のメリット2つ

  1. 振込手数料の削減
  2. 銀行口座を持たない学生や外国人労働者の受け入れが可能

賃金を支払う会社(雇用主)としては、銀行口座を利用しないぶん、振込手数料の削減が可能です。

また、銀行口座を持たない学生アルバイトや、日本で銀行口座を開設するのがむずかしい外国人労働者を雇用する際に、賃金支払いのハードルを大きく下げられます。

従業員のメリット3つ

  1. 銀行口座を作る手間がなくなる
  2. 受け取りの手間がへる(福利厚生の一環に)
  3. 銀行口座が使えなくなっても給与の受け取り可能

賃金がデジタル払いになれば、従業員としては、雇用されたときに銀行口座を用意する必要がありません。

また、受け取ったお金を、日常生活ですぐに利用できるメリットがあり、万が一、諸事情により銀行口座が使えなくなったとしても、デジタル払いであればQR決済用の口座に賃金が振り込まれます。

会社(雇用主)のデメリット2つ

  1. 支払い業務が増える
  2. システム管理費が増える(個人キー等の管理が必要)

すべての従業員が、賃金のデジタル払いを希望するとはかぎりません。そのため、通常の銀行口座への支払いと、デジタル払いを並行していくことが想定され、支払業務が煩雑になることが考えられます。

また、アプリとの連携には、個人キーの管理が必要になるため、システム管理費が増える可能性があります。

従業員のデメリット2つ

  1. 振込額および残高の上限がある(100万円まで)
  2. 現金化の対応が必要なケースがある

デジタル払いにおける従業員のデメリットとしては、デジタル払い用の口座には100万円以上をあずけられない点があげられます。

また、実際に商品やサービスを購入するときには、銀行間での送金が求められるケースもあります。その際には、デジタル払いで受け取ったお金を、現金化しなくてはいけません。

賃金(給与)デジタル払いを検討すべき会社・業界:外国人労働者の受け入れに

会社のメリット」で書いたように、銀行口座を持たない学生アルバイトや、日本で銀行口座を開設するのがむずかしい外国人労働者を雇用するさいに、デジタル払いが活用できます。

とくに、

  • 製造業
  • コンビニや居酒屋チェーン
  • 外国語教室

など、積極的に外国人労働者を受け入れている業界であれば、デジタル払いを検討する価値はあるでしょう。

賃金(給与)デジタル払いの4ステップ

1.就業規則(賃金規程)の改定

就業規則に記載する内容は法律によって定められており、賃金の支払方法にかかわる内容については、就業規則の絶対的必要記載事項となります。

なお、労働基準法第24条第1項においては、賃金の支払方法は現金払いが前提となりますが、従業員の同意があれば、銀行口座への振り込みが可能です。

2023年4月1日以降は、従業員の同意があれば、銀行口座だけでなく、厚生労働省の指定を受けた資金移動業者の口座へ電子マネーの支払いが、認められるようになりました。

2.”賃金の口座振込に関する協定書”を確認

賃金デジタル払いを行うためには、会社(雇用主)と従業員の過半数との間で”賃金の口座振込に関する協定書”による労使協定を結ぶ必要があります。

3.従業員への説明

賃金デジタル払いを希望する従業員には、個別に同意を得る必要があり、会社(雇用主)の都合だけでは強制できません。

あわせて、同意を得る前には、制度の内容や留意事項などの説明義務があります。

4.”口座振込同意書”を取得

口座振込同意書による従業員および会社(雇用主)の同意が確認できれば、賃金デジタル払いが可能となります。

同意については、書面だけでなくメールでも問題ありません。口頭による確認だけでは認められないため、注意しましょう。

<口座振込同意書のサンプル(厚生労働省の資料より)>

賃金(給与)デジタル払いは今後さらに普及する可能性あり

2023年4月より開始した制度のため、従業員からの希望があっても対応がむずかしいケースが考えられます。

しかし、

  • 経済産業省によるキャッシュレス決済の促進
  • 時間的コスト・人件費の削減
  • 一定のニーズがある

といった理由から、賃金デジタル払いは、さらに普及する可能性もあります。

また、会社(雇用主)および従業員にとってもメリット&デメリットがあるため、導入時には注意が必要です。

今後、賃金デジタル払いを導入する際の疑問点があれば、顧問社労士への相談がおすすめです。また、弊社でもご相談を受け付けておりますので、お気軽に「お問い合わせ」ください。

【参考文献】
●労働基準法施行規則の一部を改正する省令の公布について
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T221129K0020.pdf

●資金移動業者登録一覧(金融庁)
https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/shikin_idou.pdf

●国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202104_15.pdf

●一般社団法人日本資金決済業協会
https://www.s-kessai.jp/businesses/funds_transfer_overview.html
https://www.s-kessai.jp/businesses/faq_02_18_b.html

●資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html

●経済産業省:キャッシュレス更なる普及促進に向けた方向性
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/pdf/001_05_00.pdf

●経済産業省:2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました
https://www.meti.go.jp/press/2023/04/20230406002/20230406002.html

●経済産業省キャッシュレス・ビジョン
https://www.hkd.meti.go.jp/hokir/cashless/data/cl_vision.pdf

●資金移動業者の口座への賃金支払について
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001005118.pdf

●労働基準法施行規則の一部を改正する省令の公布について
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T221129K0020.pdf

●資金移動業者の口座へ賃金支払の制度の概要 7つの要件
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001082146.pdf

●「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(令和2年 10 月末現在)
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000728546.pdf

●労働基準法第
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

●労働基準法施行規則の一部を改正する省令の公布について
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017089.pdf

●賃金の口座振込み等について
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T221129K0030.pdf

●労働基準法施行規則の一部を改正する省令の公布について
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017089.pdf

●労働基準法施行規則の一部を改正する省令の公布について
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017089.pdf

●厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払について
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001005118.pdf

●労働基準法施行規則の一部を改正する省令の公布について
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017089.pdf

●口座振込同意書URL
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017091.pdf

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