突発的な事故が発生して、有給休暇を取得中の従業員に出勤してもらった場合、賃金はどういった取り扱いになるでしょうか?今回は、有給休暇に出勤してもらった場合の賃金・有給の取り扱いについて解説していきます。
有給休暇の取得中に出勤してもらった時の賃金はどうなる?
従業員が有給休暇中に急なトラブルが発生し、経営者の都合により出勤させるには、本人の同意が必要です。緊急の呼出しに応じるか否かは、従業員の自由意思に委ねられます。
従業員が応じた場合は、有給休暇は消滅して、当然ながら、その日は労働日として取り扱います。使用者は、労働時間に対応する賃金を従業員に支払う必要があるので注意しましょう。
有給休暇中に1日出勤すれば、有給を1日分取り消して、1日分給与の支払いで問題ありません。労働の始業時刻は、出勤の呼び出しを受けた時点となります。労働時間が所定労働時間に満たない場合には、残りの時間は「使用者の責に帰すべき事由による休業」という取り扱いとなります。
有給休暇の取得日に数時間出勤した場合
では、急な出来事が発生して数時間だけ働いてもらった時は、どうなるでしょうか?
例えば、所定労働時間が8時間の会社の場合で、急遽数時間だけ働いてもらった場合、その日は有給休暇ではなくなります。
この場合の賃金の支払いは、2パターンに分かれます。
まずは、8時間分ではなく、実際に働いた数時間分を支給します。その上で、その日支給した数時間分の賃金が通常の1日分の6割と比べて多いか少ないかを確認します。
①実際に働いた数時間 > 1日の給与の6割
この場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の使用者が保障しなければいけない額を超えている為、追加で支払う必要はありません。
②実際に働いた数時間 < 1日の給与の6割
この場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の保使用者が障しなければいけない額未満なので、“1日の給与の6割分-実際に働いた2時間分”の差額を追加で支給します。
割増賃金を支払う必要はある?
通常、有給休暇は労働日の0時~24時までの労働が完全免除されます。注意したいのは、有給休暇は通常の労働日であって休日ではありません。
通常の勤務となるため、割増賃金を支払う必要はありません。所定勤務時間の終了時間以降に働いた場合、1日8時間・週40時間以内に収まっている限りは、時間外割増賃金の支払いは必要ありません。
時間外労働として、125%の割増賃金を支払わなければならないケースは、1日8時間、週40時間を超えて労働させた場合です。実労働時間が1日8時間を超えない限りは、割増賃金の支払いの問題は生じません。
有給休暇中の交通費は支払う必要はある?
通勤交通費は、使用者に支払い義務のあるものではありませんので、有給休暇期間に対して必ずしも支払う必要は生じません。通勤交通費は、法的に義務付けられたものではなく、会社の規定が重要なポイントです。
ただし、労働基準法第134条には、「使用者は、第39条第一項から第三項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならない。」と定められています。
交通費が賃金の一部として月額一定の賃金額として支払われているのであれば、交通費を支払わなければなりません。
年次有給休暇の取り扱いはどうなる?
有給休暇中に緊急事態が起こり、従業員に出社してもらった場合は、短時間であっても、有給休暇を取得したことにはなりません。年休取得は無効で取り消されますので、また別の日に有給休暇を与える必要があります。
就業規則に規定がある場合には、いわゆる半休扱いとなり、半休をまた別の日に与える対策法もあります。原則、勤務した時間については賃金の支払いで対応することになります。
事前に有給休暇取得の規定を決めることが大切
緊急事態が発生して、会社側が従業員に出勤してもらうようにお願いするケースの他、従業員が会社に言わずに勝手に出勤してしまったケースもあります。後に、有給休暇中の賃金でトラブルにならないためにも、事前に会社で規定を決めておくことが大切です。
有給休暇は半日単位や時間単位の取得ができる形にしておくと、時給換算で調整することが可能となります。
まとめ
今回は、有給休暇に出勤してもらう場合の賃金・有給の取り扱いについてご紹介しました。1日8時間・週40時間以内に収まっている限り、時間外割増賃金の支払いは必要ありません。