労働基準法第39条により、従業員には勤続年数に応じた日数の年次有給休暇を付与することが義務付けられています。
シフト制により、1日の勤務時間が日によって異なる従業員に対しては、有給消化に対する賃金はいくら払えば良いのでしょうか?
結論から言えば、このようなケースの場合は「3つの選択肢」がありますので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
【3通り】曜日によって勤務時間が異なる従業員に有給を与える方法
例えば、月曜日は2時間働き、火曜日は6時間働く従業員の場合は、曜日や日によって労働時間が異なります。このような従業員に対しては、どのように有給の手当を払えばよいのでしょうか。
①労働基準法で定める平均賃金
平均賃金を計算して支払うやり方は、実際の勤務実態に合わせて計算する方法です。
労働基準法では、平均賃金は過去3ヶ月分の平均とすると定義されています。過去3ヶ月分の平均賃金を計算して、その金額で有給の給料を支払います。過去3ヶ月分の平均賃金を毎回計算する手間がかかりますが、勤務実態に合った正確な金額が計算できるのがメリットです。
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
雇用契約書に定められた勤務時間分の賃金は本来支払われるべき通常の賃金です。
例えば、月火木金曜日は1日7時間勤務、水曜日のみ4時間勤務という条件が雇用契約書に記載されています。月火木金曜日に有給を取得した場合は、7時間に時給をかけた金額を支払います。水曜日に有給を取得した場合は4時間に時給をかけた金額を支払います。
1日3時間勤務の日に有休を取れば3時間分、6時間勤務の日に有休を取れば6時間分とシンプルな計算方法です。1日の勤務時間や曜日がバラバラの場合は、雇用契約書に定められた勤務時間分の賃金が一般的です。
③健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額(労使協定が必要)
社会保険料を計算する際に、従業員の給与額を標準報酬月額にランク分けします。
実際の給与額とは多少異なりますが、その標準報酬月額を30で割った金額を有給取得日の給与分として支払うやり方です。土日・祝日も含んだ日数30で1日分の給与額を計算します。通常月の所定労働日数は30日より少ない為、標準報酬月額(≒1か月の給与)を30で割ると有給で支給する賃金は少なくなります。
労働者側に不利益になる可能性があるため、この方法を採用する場合には、事前に労使協定を結ぶ必要があります。
どれを選ぶか総合的に決めよう
毎日の所定労働時間数が違うパート従業員に対して、有給休暇に対する賃金は何時間分支給するべきかは3つの方法があると分かりました。実際は、所定労働時間働いた場合の通常の賃金、または過去3カ月の賃金総額を暦日数で割って支払うケースが多く見られます。
労働者と労使協定を結んで、健康保険の標準報酬日額を支払うケースはほとんど見られません。所定労働時間の通常の給与のやり方にすると、計算するのは簡単ですが、平均賃金のやり方は、平均賃金を出すまでに手間がかかるデメリットがあります。特に所定労働日数が少ない従業員への有給休暇が高額になるため、人事担当者は注意が必要です。
しかし、平均賃金で計算すると、長時間シフトの日でも少ない金額の支払いですむメリットもあり、一概には損するやり方ではありません。計算方法にどれを選ぶかは、総合的に考えて検討してみてください。
まとめ
支払方法としては、平均賃金または所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金が一般的なやり方です。従業員に有給休暇を支払う方法は、支払いする度に選択することは原則として認められていません。
あらかじめ就業規則等でどの方法で支払うかについて明確に規定しておくことが必要になります。