少子化対策として、出生率を高めることは非常に重要な社会的課題に位置付けられています。国や自治体は子育てしやすい社会づくりを目指してさまざまな施策を行い、企業には従業員が育児休業を取得しやすい環境の整備が求められています。
この記事で紹介する働くパパママ育休取得応援奨励金は、育児休業取得後に復職する従業員に対して雇用継続のための取り組みを行う企業を対象にした制度です。内容についてご説明します。
働くパパママ育休取得応援奨励金とは?
働くパパママ育休取得応援奨励金は公益財団法人・東京しごと財団が雇用環境整備事業として実施している制度です。東京都と連携し、男性の育児休業取得や育児中の女性の就業継続を応援する目的で奨励金支給が行われています。
働くパパママ育休取得応援奨励金を受給できるのは東京都内に本社または事業所を置き、常時雇用する従業員が2名以上いる企業です。対象従業員も申請日時点で東京都内に勤務している従業員に限られます。
コースは、「働くパパコース」と「働くママコース」の2つ
働くパパママ育休取得応援奨励金には働くママコースと働くパパコースの2コースがあります。働くママコースは一律125万円、働くパパコースは取得育児休業日数に応じて25~300万円が支給されます。働くパパコースは男性従業員のみが対象ですが、働くママコースは要件を満たせば女性従業員に限らず男性従業員でも対象になることができます。
働くパパママ育休取得応援奨励金の内容
働くママコース
働くママコースは育児中の雇用を継続する環境整備を行った中小企業を支援する奨励金です。女性・男性を問わずに従業員に1年以上の育児休業を取得させ、復職後3か月を経過した場合に一律で125万円が支給されます。
対象企業・従業員
働くママコースは従業員数300名以下の中小企業が対象です。大企業は働くママコースの活用はできません。
従業員要件は1年以上の育児休業を取得し、復職して継続雇用されていることです。育児休業前の職に復帰し、3か月を経過した場合に申請手続きをすることができます。
環境整備要件
働くママコースでは環境整備要件も問われ、2点の取り組みの実施が求められます。
1点目は法律を上回る取り組みの実施です。
- 育児休業等期間の延長
- 育児休業等延長期間の延長
- 看護休暇の取得日数上乗せ
- 時間単位の看護休暇導入(中抜けを認めるもの)
- 育児による短時間勤務制度の利用年数の延長
のいずれかについて育児・介護休業法を上回る取り組みを、就業規則に定めていることが求められます。就業規則の規定が育児・介護休業法を上回っているかどうかは、就業規則の施行日時点で判断されます。
2点目は育児休業中の従業員に対する復帰を支援する取り組みの実施です。復帰に向けて1回以上の面談、定期的な社内情報・資料の提供を行ったことが必要です。
働くパパコース
働くパパコースは男性従業員に育児休業を取得させ、育児参加を促進した企業を対象にした奨励金制度です。連続して15日以上の育児休業を男性従業員に取得させた場合に15日の育児休業取得で25万円、その後15日の休業日数ごとに25万円が加算される額が支給されます。最大で300万円の奨励金を受け取ることができます。
働くママコース同様、育児休業前の職に復帰して3か月以上雇用が継続していることが受給の条件です。子が2歳になるまでの期間内の育児休業が対象です。
対象企業・従業員
働くパパコースは企業規模不問で、中小企業だけでなく大企業も支給を受けることが可能です。
従業員要件は1年以上の育児休業を取得し、復職して継続雇用されていることです。育児休業前の職に復帰し、3か月を経過していることが必要です。
令和3年度は中小企業の特例措置あり
令和3年度については中小企業を対象に、加算や合算申請の特例措置が設けられています。
- 子の出生後8週の期間(出産の翌日から56日間)に30日以上の育児休業を取得した場合、一律20万円が加算されます。
- 子の出生後8週の期間(出産の翌日から56日間)に初回の育児休業を取得した場合、2回目以降の育児休業を取得のうち1回分を合算して申請することができます。
働くパパコースは大企業も受給できますが、特例措置は常時雇用する従業員数が300人以下の中小企業のみが対象です。
働くパパママ育休取得応援奨励金の申請方法
働くパパママ育休取得応援奨励金の申請は公益財団法人・東京しごと財団に行います。支給申請書に誓約書、奨励対象事業者であることを確認するための書類、奨励対象事業内容を確認するための書類、その他添付書類を添えて申請します。支給申請期間は対象従業員が復職してから3か月を経過した日の翌日から2か月以内、または令和4年3月31日までの早い日までです。
働くパパママ育休取得応援奨励金支給申請の注意点
働くパパママ育休取得応援奨励金を受給できるのは一事業主の一事業年度につき1回です。別法人格であっても同一代表者は1回しか受給できません。同一年度に同一の従業員が同一の子に対し奨励金を受給するまたは受給した場合の働くママコースと働くパパコースの併給もできません。
令和4年3月31日までが申請受付期間ですが、予算を超えると事業は終了します。その場合は早期に受付が締め切られます。
まとめ
企業の育児休業を取得しやすいような環境の整備は、社会的責任の1つです。また福利厚生が充実することになり、従業員の労働意欲・モチベーション向上による生産性の向上にもつながります。働くパパママ育休取得応援奨励金のような企業の負担を軽減する制度を活用して、積極的に取り組みましょう。