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知らないとまずい!「36協定」とはどんなもの?基礎知識を押さえておこう

投稿日:2019年1月30日

経営者・人事労務担当者であれば知っているのが当たり前の36協定(通称:さぶろく協定)。しかし、基礎的な知識が不足したまま運営している企業も少なくありません。36協定は一体どんなものか、基礎的な知識を押さえておくようにしましょう。

2018年6月に成立した「働き方改革関連法(推進法)」で、2019年4月から時間外労働の上限規制内容が決まりました。違反した場合は罰則付きに変わるなど、これまでよりも厳しい基準となることがわかっています。

自社にマイナスイメージを植え付けないよう自社の時間外・休日労働内容をチェックし、対策を図っておきましょう。

36協定とは?

36協定とは、時間外(残業)や休日の労働などに関した協定で、企業と従業員間の協議で締結していくもの。労働基準法第36条ということで、36協定と呼ばれています。

労働基準法で定められている1日に8時間・1週間に40時間、毎週1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日というルールを時間外・休日労働で破った場合は労働基準法違反となります。その違反の範疇にある時間外・休日労働に関して、36協定を結べば適法となるという協定です。

以下、厚生労働省のHPから引用です。

労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定において、時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められます。この労使協定を「時間外労働協定」といいます。なお、時間外労働時間には限度が設けられています。

本来は現存する企業のほとんどが時間外労働をさせているにも関わらず、36協定を締結・提出していないことが公表されています。下記出典の調査では、なんと56.6%もの中小企業が36協定を結んでいないにも関わらず時間外・休日労働をさせている実態が明らかになっています。

近年の過労死や生産性の低さを改善すべきという働き方改革の流れを受けているためか、今回2019年4月の改正に踏み切った形となりました。

36協定を結ぶ手順

36協定はまず企業側と労働者が協議をすることが必要です。そのためには労働組合、もしくは労働組合がない企業であれば従業員の過半数支持を受けている代表を選出します。労働組合もしくは従業員代表と下記内容について協定を行ってください。

  • 時間外労働をさせる必要のある具体的な事由
  •       〃        業務の種類
  •       〃        労働者の数
  • 1日/1カ月/1年の法定労働時間を超える時間数
    (※1カ月は45時間まで、1年は360時間まで)

協定を結んだ後、労働基準監督署に協定届を提出します。

この場合はセーフ?それともアウト?

①法定労働時間と残業の考え方

【質問】

会社で決めた労働時間(所定労働時間)が7時間。1時間残業しているのにどうやら36協定を結んでいない様子。この場合は罰則などのペナリティはありますか?

【回答】

この場合は法定労働時間(1日に8時間・1週間に40時間)を越えていないのでセーフとなります。労働基準法で定められているのは所定労働時間に対する時間外ではなく、法定労働時間に対する時間外となるため1日に8時間+1時間などの場合に適用となります。

②完全週休2日制と週休2日制

【質問】

週休2日制なのに、今週は土曜日に出勤を求められた。これは36協定を結んでいないとアウトなのではないか?

【回答】

法定休日を下回っていないため、法定労働時間(1日に8時間・1週間に40時間)を越えていない場合はセーフとなります。完全週休2日制と週休2日制で休みの規定が異なるのをご存じでしょうか。週休2日制は月1回以上、2日の休みがある週が存在していれば週休2日制となるため、問題ありません。

36協定を破った場合の措置

労働基準法違反となります。2019年4月から(中小企業は2020年4月から)罰則つきの上限が設けられるのはご存じでしょうか。

罰則付き上限

  • 時間外労働の上限(「限度時間」)は、月45時間・年360時間
  • 臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。また、月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。

これまで違反しても罰則がついていなかったのですが、2019年4月からの改正で法律となるため、罰則つきとなります。上記に説明されている臨時的な特別の事情=特別条項があった場合でも、上限を破ることは認められません。これまでと同じように対応しないよう注意しましょう。
また、罰則内容は「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」となっています。

企業名の公表

36協定自体を結んでいない企業や労働基準法を破った企業に関しては、企業名と違反内容を公表されることになります。公表されている情報のため、企業名を検索したときに違反内容が出てくる可能性もあります。企業の信用を落とすことにつながりますので、注意しましょう。

まとめ

36協定のルール、違反・罰則になるかどうかのライン、法改正によって変わるポイントなどを網羅的にご紹介しました。違反企業として罰則を受ける・公表されるなどがあると、採用力が弱まる・会社としての信用が落ちることにもつながります。せっかく積み上げてきたことを無駄にしないためにも、ぜひ参考にしてみてください。

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