労働社会保険手続き 読みもの(人事・労務向け記事)

公金受取口座とは?制度の概要、登録方法、社会保険の給付金受け取りについて解説

投稿日:2023年1月23日

デジタル庁が主導で行う取り組み「公金受取口座登録制度」についてご存知でしょうか。
2022年10月からはこの制度を利用して、傷病手当金や出産手当金といった給付金の受け取りが可能となっています。
この記事では、公金受取口座制度の概要、登録方法、制度を利用した社会保険の給付金受け取りについてみていきましょう。

公金受取口座の概要

公金受取口座の概要として、下記の3項目にまとめました。

  • 公金受取口座登録制度とは
  • 公金受取口座で受け取ることができる給付金
  • 登録が可能な金融機関

それぞれの内容について解説していきます。

公金受取口座登録制度とは

公金受取口座登録制度とは、給付金などを受け取るための預貯金口座を、1人につき1口座、あらかじめ国(デジタル庁)に任意で登録する制度のことです。

登録した口座を公金受取口座といい、給付金申請時に同口座を登録しておくことで、口座情報の記入や通帳の写しを提出する必要がなくなります。
これまで申請のたびに必要とされていた書類確認の手間を省き、給付金をより迅速に受給できるようになる点が大きな特徴です。

公金受取口座での給付金の受け取りは、2022年10月より準備が整った団体から運用が開始されています。
ただし2022年12月までは試用運転期間であるため、公金受取口座への振込を指定した際には、従来どおり口座情報の記入などを求められる場合があるので留意しておきましょう。

公金受取口座で受け取ることができる給付金

デジタル庁では、公金受取口座を利用して受け取ることができる給付金として、以下13のカテゴリーを挙げています。

  1. 年金
  2. 子育て給付
  3. 就学支援(現在公開されている情報はありません)
  4. 障害福祉
  5. 生活保護
  6. 労災保険・公務災害補償
  7. 失業保険
  8. 職業訓練給付
  9. 健康保険
  10. 介護保険
  11. 災害支援者支援(現在公開されている情報はありません)
  12. その他

このように公金受取口座は、年金や児童手当だけでなく、傷病手当金、出産手当金などといった幅広い給付金の受け取りに活用できるのです。

登録が可能な金融機関

公金受取口座として登録できる金融機関には、主に下記のような種類があります。

  • 銀行
  • ゆうちょ銀行
  • ネット銀行
  • 信用金庫
  • JAバンク等

金融機関にお持ちの本人名義の預貯金口座を登録できますが、一部の金融機関では登録完了までに通常より期間を要する場合があります。

詳しくはデジタル庁ホームページよりご確認ください。

公金受取口座の登録方法

公金受取口座の登録方法は、以下の3つです。

  • マイナポータル
  • 所得税の確定申告時(マイナンバー方式)の登録申請
  • 金融機関の窓口等での登録

それぞれの登録方法をみていきましょう、

マイナポータル

スマートフォンを使って(※1)マイナポータルで公金受取口座を登録する方法です。
登録に必要なものと登録手順は、以下のとおりとなっています。

登録に必要なもの

  • マイナンバーカード
  • 本人名義の預貯金口座
  • マイナンバーカード読取に対応したスマートフォン
  • マイナポータルアプリのインストール

登録手順

  1. イナポータルにログイン後「公金口座の登録・変更」の項目をタップ
  2. 「マイナンバーカードを読み取る」をタップして読み取らせる
  3. 自動で入力された本人情報の内容を確認して「確認する」をタップ
  4. 「口座情報を登録する」の項目をタップして口座情報を入力すれば登録完了

(※1)マイナンバーカードを持った全国民が利用できるオンラインサービス。
2017年に開設された政府が運営するウェブサイトのことをいいます。

所得税の確定申告時(マイナンバーカード方式)の登録申請

所得税の確定申告(電子申告)の際に、マイナンバーカード方式で公金受取口座の申請を行う方法です。

還付金の受取口座を公金受取口座として登録申請する場合は「公的給付支給等口座」の項目で「登録する」を選択したうえで確定申告を行なってください。

なお公金受取口座の登録が可能となるのは「マイナンバーカード方式」による所得税の確定申告のみとなり「ID・パスワード方式」では登録申請することができません。

金融機関の窓口等での登録

各金融機関の窓口での受付は、令和5年度(2023年度)下期以降に開始予定です。

企業の労務担当者がとるべき行動

公金受取口座登録制度を活用するかは個人の任意ですが、会社が申請手続きに関わる給付金等(健康保険関係や雇用保険関係等)も含まれているため、企業の担当者としては概要を把握する必要があるでしょう。

トラブルを防ぐためにも、従業員へ制度を利用する意思があるかどうかの確認を行うなど事前周知に努め、従業員からの質問に対応できるよう備えておくことが大切です。

本制度の本格運用開始は2023年以降を予定しているとのことですので、給付金の種類ごとに対応の開始時期が異なることも予想されます。

今後も各行政機関からの情報や動向に注視し、推移を見守っていきましょう。

まとめ

この記事では、公金受取口座の制度概要、登録方法、社会保険の給付金受け取りについて解説しました。

本制度によって給付金申請時の負担が軽くなることが予想されますが、公金受取口座を登録するタイミングと各種給付金の申請時期によっては、希望していた口座へ振り込みされないなどのトラブルも想定されます。

公金受取口座登録制度は始まったばかりの仕組みですので、今後の取り組み内容に注目し、適時適切な対応をとれるようにしましょう。

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