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【障害者雇用促進法改正】障害者雇用企業実務担当者必見 調整金・報奨金減額について解説

投稿日:2022年11月15日

令和4年10月、政府は障害者総合支援法などの改正案を閣議決定しました。今期国会で成立すれば、令和6年4月1日に一部、施行される予定です。

その中には障害者雇用促進法改正案も含まれており、閣議決定に先立ち令和4年9月、障害者雇用促進法改正案要綱は厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会の諮問を受け、改正案は妥当と了承されたばかりでした。

またさらに遡り令和4年6月には、労働政策審議会が障害者雇用分科会からの報告を受け、厚生労働大臣宛に労働政策審議会障害者雇用分科会意見書(以下、意見書)を提出していました。

意見書」はネット上で公表されており、

今般、新たに措置することが適当とされた週10時間以上20時間未満の障害者に対する雇用率制度における特例、除外率の引下げや、長期継続雇用の推進等、個別の施策を進めるに当たり、雇用の質の向上という観点では合理的配慮の提供が重要であり、事業主は合理的配慮の提供について、その意義を改めて認識し対応することが適当である。

【引用】厚生労働省

と締めくくられていました。つまり今後、事業者は少なくとも

  • 雇用率制度の特例
  • 雇用率制度の特例

についてチェックし、

  • 長期継続雇用
  • 合理的配慮

といった対応をしていかなければなりません。そこで今回は経営者や実務担当者がチェックすべき雇用率制度の特例と除外率の引下げについて解説していきます。

障害者雇用率と関連制度

まずこの章では

  • 障害者雇用率とは
  • 障害者雇用納付金制度
  • 除外率制度

について概要を説明いたします。

障害者雇用率とは

カンタンに言えば、事業主の障害者雇用義務人数をパーセンテージで規定したものです。

これは障害者雇用促進法に基づくものであることから法定雇用率とも言われ、民間企業は現状2.3%です(労働者100人以上の民間企業で記事執筆時点の数値)。

つまり労働者が100人必要な民間企業は、3人の障害者を雇用して、稼働させるようにと法整備されています。

障害者雇用納付金制度

法定雇用率を達成できなかった場合は、毎月一定額の納付義務が課され、逆に法定雇用率を越えて雇用した場合は調整金が受けられます。

また調整金と混同しやすいのですが、実は労働者100人以下の事業主も報奨金が受けられます。

障害者雇用納付金 不足している障害者数に応じて1人につき月額5万円支払う
障害者雇用調整金 超過雇用している障害者数に応じて1人につき月額2万7千円
報奨金 超過雇用している障害者数に応じて1人につき月額2万1千円
※月平均雇用率4%超かつ6人超雇用に限る
【引用】厚生労働省

障害者雇用促進を図るためのこれらの制度ですが、企業の多くは納付金負担をできる限り回避したいと考えるのではないでしょうか。

意見書では残念ながら、達成させることが目的になっていると指摘しています。

除外率制度

  • 危険
  • 複雑
  • 精密

そういった仕事を展開している企業で障害者が働くのは、どちらかといえば難しいでしょう。そのため一部業種については法定雇用率が低めに設定されています。

これは適用業種が限られているため、対象外企業の実務担当者は知らないかもしれません。

ここまで障害者雇用率と関連制度についておさらいしたところで

  • 雇用率制度の特例
  • 除外率の引下げ

について解説いたします。

雇用率制度の特例とは

経営者や実務担当者なら、障害者の抱える症状は千差万別であり本人が希望していても重度で週20時間以上、働けない方もいるというのは実感されていると思うのですが意見書にも“一定数存在”していることが明記されています。

しかし現行制度上の雇用義務対象は、週20時間以上働ける方だけであり、週20時間以上働けない方は極論“採用されにくく解雇されやすい”ため制度上で守られていませんでした。

そこで意見書では雇用率制度において特例を設ける

具体的には、週10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者は、その障害によって特に短い労働時間以外での労働が困難な状態にあると認められるため、特例的な取扱いとして、その雇用を実雇用率の算定対象に加える

【引用】厚生労働省

ことが適当と進言しています。

除外率引下げとは

除外率については先ほど説明したとおりですが、実は平成14年の法改正により廃止されており、現在は特例で存続している制度です。

平成16年、平成22年にポイントが引き下げられましたが、今日まで10年以上そのままになっています。

それを受け意見書では、これは重大な問題であると指摘し、廃止に向け除外率を現状から一律10 ポイント引き下げることが適当である旨、記しています。

雇用率制度の特例が適用されることによって調整金や報奨金の総支給が増額すると期待される経営者や実務担当者もいるかもしれませんが、残念ながらこれまで障害者雇用に大きく貢献してきた事業者においては、調整金減額、報奨金減額が言及されていますので、章を譲り解説いたします。

調整金減額・報奨金減額について

参考資料によると、以下のような説明が記載されています。

調整金を受給している企業が一定の人数(10人)を超えて、調整金の対象となる障害者を雇用している場合、当該超過人数分の調整金について単価を引き下げる。(1人当たり月額2万7千円を半額)
報奨金を受給している企業が一定の人数(35人)を超えて、報奨金の対象となる障害者を雇用している場合、当該超過人数分の報奨金について支給しないこととする。

【引用】厚生労働省

このように10人以上雇用している調整金受給企業、35人以上雇用している報奨金受給企業は現在よりも支給額が減ることとなります。

しかしながらその一方で、意見書では事業主のニーズを考慮した助成金について言及がなされていますので、ご紹介します。

事業主のニーズを考慮した助成金

意見書では、中高年障害者の雇用継続のための取組みや障害者雇用コンサルティングを行う事業者などから相談支援を受け雇用促進した事業主への助成。既存助成金もさらに充実させることが適当と明記されていますので今後、厚生労働省などから発出される情報に刮目したいところです。

まとめ

今回の改正障害者雇用促進法は早ければ令和6年4月1日より施行となります。障害者雇用企業は調整金や報奨金の減額について、今後様変わりするであろう助成金についても社内で共有し、余裕をもって対策に備えたいものです。 

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