国内の労働環境を改善するため、国は労働時間の見直しや有休休暇の取得促進などの内容を盛り込んだ「働き方改革関連法」を2018年に成立させ、2019年4月から適用されています。
働き方改革の取り組みを促進するにあたっては、人的リソースや資金力の乏しい起業や団体に対して支援を行う必要があります。このような支援の一環として、「時間外労働等改善助成金」が設けられています。
本助成金には、勤務間インターバル導入コース、時間外労働上限設定コース、職場意識改善コース、テレワークコースの4つのコースが設けられていますが、今回は「勤務間インターバル導入コース」について解説します。
時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)の概要
「勤務間インターバル」とは、勤務終了後に一定時間「休息時間」を設けることで健康保持や過重労働の防止を図るものであり、平成31年4月から制度の導入が義務化されています。
助成金の活用方法としては、助成金によってインターバル制度を導入するために設備・機械等を導入することで生産効率性の向上が期待できることや、労務管理用機械やソフトウェアの導入により士業・終業時刻を正確に管理できるようになることなどが挙げられます。また、外部専門家によるコンサルティングや人材確保に向けた取組等についても助成対象となっています。
いずれの取組においても、助成金を活用することで労働環境の改善と共に企業の生産性向上も達成できることがメリットとなっています。
勤務間インターバル導入コースの助成内容
対象事業主
本補助金の助成対象になるには、以下のいずれかに該当する中小企業事業主であることが条件となります。
②既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半 数以下である事業場
③既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
以上の3つの条件によって、それぞれ補助率が変わりますので、自社がどの条件に該当するか確認する必要があります。
また、支給対象となるには以下のいずれかの取組を1つ以上実施することが条件とされています。
② 労働者に対する研修、周知・啓発
③ 外部専門家によるコンサルティング
④ 就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤ 人材確保に向けた取組
⑥ 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
⑦ テレワーク用通信機器の導入・更新
⑧ 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
なお、①、②における「研修」には業務研修も含まれます。また、⑥、⑦、⑧における機器等の導入・更新は、原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象になりません。
また、本補助金の支給対象になるには、インターバル制度の取組に関する「成果目標」を達成することが求められます。
新規導入の場合は「新規に所属労働者の半数を超える労働者を対 象とする勤務間インターバルを導入すること」、インターバル適用範囲を拡大する場合は「対象労働者の範囲を拡大し、所属労働者の半 数を超える労働者を対象とすること」、インターバルの時間を延長する場合は「所属労働者の半数を超える労働者を対象とし て、休息時間数を2時間以上延⾧して、9時間 以上とすること」が成果目標となります。
支給額
上述の成果目標を達成した場合、取組実施に要した経費の一部が支給されます。補助率と上限額については、以下の通りです。
新規導入に該当するものがある場合
休息時間数 | 補助率 | 上限額 |
9時間以上11時間未満 | 3/4 | 80万円 |
11時間以上 | 3/4 | 100万円 |
適用範囲の拡大・時間延長のみの場合
休息時間数 | 補助率 | 上限額 |
9時間以上11時間未満 | 3/4 | 40万円 |
11時間以上 | 3/4 | 50万円 |
このように、基本的には補助率は経費の3/4とされていますが、常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で⑥、⑦、⑧を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5となります。
昨年度からの変更点
本補助金は昨年度も支給されていますが、昨年度と内容や予算額が異なっています。
勤務間インターバルコースは、昨年度が要求額ベースで1,027,974千円であったのに対し、31年度は1,104,767千円となっています。
また、昨年度は新規導入に該当する場合は9時間以上11時間未満で40万円、11時間以上で50万円でしたが、今年度は上記のように上限額が2倍になっています。同様に、適用範囲の拡大・延長に該当する場合も、昨年度は9時間以上11時間未満で20万円、11時間以上で25万円でしたが、今年度は上限額が2倍とされています。
また、支給条件や休息時間数の区分などには変更はありません。
自社の労働条件の向上と業務効率化を促進するためにも、本助成金の活用を検討してみましょう。