平成30年7月に「働き方改革関連法」が成立しました。その法令内容は一部を除き、本年2019年4月から適用されます。大きな変革点は下記5点です。
- 労働時間の法制の見直し (長時間労働の禁止)
- 有給休暇の取得促進
- フレックスタイム制の積極的導入
- 高度プロフェッショナル制度の創設
- 労働時間のより適正な把握
各企業の取り組み事例
今回は、この法令に対して具体的にどのような取り組みが行われているかを、働き方改革の先進企業の導入例を見て行きましょう。自社の参考になるものがあれば是非採用していただきたいと思います。
アステラス製薬株式会社
「アステラス製薬株式会社」は、国内で売上第2位を誇る製薬会社です。同社の取り組みは、「女性が活躍できる風土作り、勤務時間を評価対象外にする」といった施策を実施しました。
内容
- 【裁量労働制の導入】専門職と呼ばれるR&D従業員を対象に専門業務型裁量労働制を、スタッフ従業員には企画業務型裁量労働制度を導入。
- 【職務給制度の導入】年齢や勤続年数に関わらず、仕事の付加価値や難易度で給与を決定。
効果
- 労働時間が評価と結びつかなくなった為、ダラダラ残業が減少。労働者が通常勤務時間内に集中して業務に取り組むようになった。
- 純粋に働いた成果が認められる環境となり、従業員のモチベーション向上や目標管理制度がスムーズに運営できるようになった。
東レ株式会社
「東レ株式会社」は、合成繊維や合成樹脂を用いた化学製品や情報関連の素材を扱う大手化学企業です。同社の取り組みは、「働きがいと公正な機会を」という経営理念にも象徴されます。また各個人の事情を考慮して、多様な生活スタイルに沿った働き方ができる仕組みを作っています。
内容
- 【労働時間短縮】業務プロセスを根本から見直し、時間外労働が発生した場合には原因分析と解決を現場ごとに徹底して行い、再発させない。
- 【トータルコスト削減】仕事を見直し、無駄な仕事を失くすなどすることによって業務の効率化を実践。
- 【個別面談の実施】上司と部下が個別面談を行い、労働全般について話し合いを行う機会をたくさん作る。
効果
- 有給休暇の取得率が92.9%へ大きく向上
- 残業時間の大幅な低減
味の素株式会社
「味の素株式会社」は、うま味調味料を扱う食品大手企業です。「味の素グループ」では、労働生産性を上げる為には、経営陣主体のトップダウンが最も効率的と考え、活動を実行をしています。
内容
- 【一日の所定労働時間を短縮】1日の労働時間より20分短縮し、7時間15分に変更。
- 【ペーパーレス化】経営会議の資料をデータ化、タブレット端末で確認する方式に変更。
効果
- 1日の時間が短くなることで、各従業員が効率の良い働き方を意識するようになった。
- 従来、2時間かけていた会議時間が、準備・議論に入るまでの時間の短縮につながり、1時間15分で完了する等、労働時間を短縮に成功。
まとめ
本年2019年4月より、「働き方改革関連法」が実施されます。そのため、これまでの様な働き方では法令違反になってしまう企業も多くなるかもしれません。しかし、この制度が目指す本当のゴールは2つあります。
①働く社員の幸せの向上
②今後労働力が減少する日本国内でも各企業が戦える土壌作り
欧米では先んじて実施されており、日本は取り組みに対して遅いというのが現状です。しかし、この流れは、今後変わることはありません。
各企業が実施しなくてはならないのは、「短い時間で如何に社員の生産性 (モチベーション) をあげるか、業務を効率化するか、多様な働き方を許容して、これまで活用できなかった多くの潜在従業員を上手く活用するか」になります。各社の事例を通して、自社はどう取り組むべきか考える機会を持ちましょう。