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【中小企業】猶予措置解除で60時間超え残業代が1.5倍に!実務3つのポイントを解説

投稿日:2023年4月5日

2023年4月より中小企業の月60時間超え時間外労働の残業代が50%以上の割増率へと義務付けられます。大企業では既に(2010年4月より)適用されている制度ですが、中小企業においては猶予措置がとられています。

そこで今回は主に中小企業の実務担当者に向けて、概要と改正に至った背景、改正後必要となる実務、改正に向け準備すべきことを詳しく解説していきます。

制度概要

1. 残業月60時間超え→割増率1.5倍に

実務担当者ならご存知と思いますが企業は現在、原則、月45時間、年360時間を超えて残業させることはできませんが、臨時的な特別の事情がある場合で、36協定に記載があり、

  • 時間外労働: 720時間/年
  • 時間外労働・休⽇労働合計: 100時間/⽉
  • 時間外労働・休⽇労働合計平均: 80時間/月(2,3,4,5,6か⽉平均すべてにおいて)
  • 時間外労働が⽉45時間超過: 6か⽉/年が限度

上記を守れば、例外的な長時間労働が認められています。

従業員が残業した際、猶予措置解除後は、

通常の残業分 1時間あたりの給与×残業時間(60時間上限)×1.25
月60時間超えた分 1時間あたりの給与×(月間総残業時間-60)×1.5

といった計算方法で算出した金額を支払います。ただし代替休暇を付与する場合、そのかぎりではありません。

2.代替休暇の付与

50%以上の割増率にしない代わりに、代替休暇を付与することも認められます。ただし代替休暇は残念ながら、大企業でもそれほど浸透しているわけではありません。

国に先立ち、独自に働き方改革を進めてきたトヨタですら導入は見送っていますし、2011年のデータになるのですが「日本経済新聞」によると当時、代替休暇を付与した企業は23%とわずかだったのです。

おそらく多くの中小企業も、最初は割増率1.5倍で残業代を支払う方向になるのではと考えています。

次章では、改正に至った背景を見ていきます。

改正に至った背景

多くの日本企業で定時退社は悪、残業を善とする風潮があったことが改正に至った背景と言えます。また今でも根強く残っているのは間違いないです。

そして労働時間が長くなればなるほど疲労が蓄積され脳、心臓、精神に多大な負担をかける、最悪、過労死や自殺を招くこともわかってきたため、企業が従業員を馬車馬のように働かせないようにする法整備による抑止が急務となりました。

さらに国としては長時間労働による労災発生、保険給付も抑えたいという意図もあり、制度化に至ったものと考えられます。 

ところで2010年に大企業に適用され、かなりの年月が経つこの制度ですが、その成果は出ているのでしょうか。

令和3年版過労死等防止対策白書の骨子で労働時間等の状況を見ますと、2010年(平成22年)は週労働時間60時間以上の雇用者の割合は9.4%だったのに対し、2019年(令和元年)には6.4%に減少しています。

そのため過重労働抑止の一助となった、また中小企業にも同様の効果が期待できそうと言えるのです。

概要と背景を説明したところで次章、実務について触れていきます。

改正後必要となる実務

改正後、主に3つの実務(作業)が必要です。

勤怠集計で60時間超えの残業を把握する

勤怠集計では、出勤日数/出勤時間/総労働時間/時間外労働時間/深夜労働時間などを集計しますが、猶予措置解除後は60時間超えの残業こそ人件費を爆増させる項目になりますので、必ず把握するようにします。

給与計算ソフトなどの割増率を設定する

ソフトによって仕様は異なりますが、設定で新たに月60時間超えの残業分の割増率を追加する必要があります。ただ設定画面で割増率を1.5と入力するだけでよかったりしますので、忘れず対応しましょう。

代替休暇の時間数を計算

50%以上の割増率を支払わない場合、代替休暇に充てるべき時間数を計算し、就業規則及び36協定特別条項に沿って、半日もしくは1日の代替休暇を付与します。

改正に向け準備すべきこと

1.過去データの洗い出し

従業員の残業についてこれまで月60時間超えのケースがあったか、なかったかを確認します。結果なかった、あってもわずかだった、これからも方針は変わらないなら特段、準備は不要と考えます。

しかし月60時間超えの残業が見つかった場合、猶予措置解除に向けて以下の対応も求められます。

2.勤怠集計ソフトの見直し

特に人件費を抑制したい中小企業は、月60時間超えの残業は発生しないようにしたいものです。そこでオススメしたいのがクラウドタイムカードの導入です。

クラウド=リアルタイムで従業員の残業状況をいつでも把握できますので、実務担当者が月の途中で中間集計するほか、1で洗い出した過去のデータを分析し、1年前のこの時期は残業が多かったなど頭の片隅に入れつつ、従業員が働きすぎないよう注意します。

瞬時に全従業員の勤怠状況を把握できる仕組みづくりが重要となります。

3.給与計算ソフトの見直し

クラウドタイムカードの導入を決めた場合、給与計算ソフトもクラウドタイムカードとAPI連携できるものを選ぶと、業務効率化につながりますので、検討する価値があります。

4.比較・検討

1で洗い出したデータを基に50%以上の割増率、代替休暇のどちらがいいかシミュレーションすべきです。

ちなみにトヨタが導入を見送ったのは休みが取れる部署と休みが取れない部署があり、不公平で職場になじまないという理由でしたので、経営陣の意向も大切ですが、従業員に配慮し、不公平が生じないか、職場になじむかなども材料に総合的な判断を下したほうがよさそうです。

5.就業規則を見直す

現時点で従業員の60時間超えの残業実態がある企業は猶予措置解除前に、就業規則の見直しと、36協定の締結見直しが必要です。50%以上の割増率について「厚生労働省の就業規則の規定例」で下記のように示されていますので、参考にされるといいです。

(1)1か月の時間外労働時間数に応じた割増賃金率は、次のとおりとする。なお、この場合の1か月は毎月1日を起算日とする。
  一 時間外労働45時間以下 25%
  二 時間外労働45時間超~60時間以下 35%
  三 時間外労働60時間超 50%
  四 三の時間外労働のうち代替休暇を取得した時間 35%(残り15%の割増賃金分は代替休暇に充当)
(2)1年間の時間外労働時間数が360時間を超えた部分については、40%とする。なお、この場合の1年は毎年4月1日を起算日とする。

【引用】就業規則の規定例(改正労基法(平成22年4月施行)によるもの)

また関連して現在締結されている36協定において、特別条項適用時の労使間手続き(協議・通知、同意、承認など)のフローがこれまでどおりで問題ないかも、これを機に見直すべきです。

まとめ

この猶予措置解除は、就業規則の変更も絡みますので、実務担当者の判断や一存で進めるのが難しい局面もあるでしょう。

人事労務管理の法改正について、詳細を確認したい場合は、顧問社労士にご相談ください。
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