社会保険労務士法人FORROU(フォロー) ロゴ

【6月15日最新版】「雇用調整助成金」は結局どうなった?助成率、申請方法、上限額の最新情報をまとめて公開!

投稿日:2020年6月15日

新型コロナウィルスの感染拡大により、多くの企業が従来通りの営業ができない状況にあります。とくに、外食・小売・宿泊・娯楽産業などでは、長い「休業」を余儀なくされた企業もたくさんありました。会社都合の意思決定により、従業員を休ませた場合、企業は従業員に休業手当を支払わねばなりません。その休業手当の一部を肩代わりする制度が、「雇用調整助成金」です。

「雇用調整助成金」は、すでにある制度を新型コロナバージョンに一部見直し、運用されています。ところが、この見直しの頻度が高く、「結局、現段階ではどうなっているの?」という声をよく聞きます。そこで本記事では、2020年6月15日時点での「雇用調整助成金」の制度概要、申請の仕方についてご紹介します。

2020年5月以降の大きな変更点

2020年4月20日に、同様の雇用調整助成金に関する記事(こちら)を掲載しました。掲載後の大きな変更点については、以下の9点です。

全企業対象

(1)初回を含む「計画届」の提出が不要
(2)企業規模を問わず、上限額を8330円から1人1日15000円へ
(3)雇用調整助成金のコロナ特例期間を3カ月延長し、4/1~9/30へ
(4)「平均賃金」「所定労働日数」の算定方法を簡略化
(5)支給対象期間の初日が「2020年1月24日から5月31日」までの休業の申請については、
   申請期限を2020年8月31日まで延長(※本来は事後2カ月以内)
(6)オンラインでの提出が可能に(※2020年6月15日現在、オンライン受付を停止中)
(7)出向特例措置を、緊急対応期間内においては「1か月以上1年以内」に緩和

中小企業対象

(8)解雇等を行わない中小企業の助成率を、一律10/10(100%)へ

中小企業のうち、「従業員20人以下」の小規模事業主のみ対象

(9)従業員20人以下の場合、「実際に支払った休業手当額」から助成額を算定可

いくつか細かな改正もありますが、5月以降の大きな変更点は「助成額の引き上げ」と「手続き方法の簡略化」の2点でしょう。

そのほか、雇用調整助成金制度の対象企業や、対象労働者については「前回の記事」と変更ありません。以下では、大きな改正のあった「助成額」と「手続き方法」を中心にご紹介します。

結局、いくらの助成金がもらえるの?

たび重なる見直しで、助成額(もらえる額)は徐々に増えています。結局のところ、現段階でいくらもらえるのでしょうか。

まず、大前提として、「上限額」については、すべての企業で一律15000円となりました。これまでの8330円からおよそ「倍増」したことになります。

✓ 1人1日あたり15000円が上限

そのうえで、最終的に、会社規模に応じて次のような助成率・助成額で着地しています。

大企業の場合

大企業の場合は、4月時点と変更はありません。

✓ 解雇などを行った場合、休業手当の概算額 ×2/3(約67%)
✓ 解雇などを一切行わない場合は、休業手当の概算額 ×3/4(75%)
✓ 休業中の労働者に対して教育訓練を実施した場合は、1人1日あたり1800円加算

※休業手当の概算額=「前年度の賃金総額」÷(「1カ月平均被保険者数」×「年間所定労働日数」)×休業手当支払い率(60%など)。詳細後述。

中小企業の場合

中小企業の場合は、再三の見直しをへて、現時点での最新版は以下のようになりました。

✓ 解雇などを行った場合、休業手当の概算額 ×4/5(80%)
✓ 解雇などを一切行わない場合は、休業手当の概算額 ×10/10(100%)
✓ 休業中の労働者に対して教育訓練を実施した場合は、1人1日あたり2400円加算
大企業 中小企業
解雇等あり 2/3
(約67%)
4/5
(約80%)
解雇等なし 3/4
(約75%)
10/10
(約100%)

中小企業(解雇等なし)の場合の助成率については、5月中に何度か見直しがありました。最終的に「一律100%」で落ち着きましたが、最新版の発表(こちら)は、6/12(金)に行われたばかりです。「すでに申請したものはどうなるのか?」と疑問をもちますが、これについては4/1分まで遡って適用となるそうです。すでに申請済みのもので、増加するものについては、労働局・ハローワークで追加支給分(差額)を計算してくれます。ですから、再度の申請手続きは必要ありません。

ただし、事業主が過去の休業手当を見直し(増額し)、従業員に対して追加で休業手当の増額分を支給した場合には、当該増額分についての追加支給のための手続が必要です。

「雇用調整助成金」の申請方法は、どう簡略化された?

4月時点では休業の「計画届」が必要でしたが不要になり、手続きがシンプルになりました。具体的には以下の流れで進めます。

▼ 雇用調整(休業など)の計画策定
▼ 雇用調整(休業など)について労使協定を締結
▼ 雇用調整(休業など)を実施
▼ 休業実績にもとづき、「申請書類一式」を作成し、労働局かハローワークに提出
▼ 労働局にて審査
▼ 審査に通れば申請額が企業に振り込まれる
※判定基礎期間(賃金締切期間/大半は1カ月)ごとに提出

申請書類の書き方について、小規模事業主(従業員数20名以下)のみ大幅に緩和されました。ですから、小規模事業主以外(20名超)と、小規模事業主(20名以下)に分けて紹介します。

> 続きを読む 

関連記事

【Q&A】休みたくない社員から「有給休暇」を買い取りした場合はどうなる?

有給休暇が溜まっている従業員から「仕事を休みたくないので、有給を買い取ってもらえませんか?」と言われた場合、どう対応すれば良いでしょうか? 今回は、従業員本人が休みたくない場合、有給を買い取る対応で問 …

時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)を詳しく解説!

国内の労働環境を改善するため、国は労働時間の見直しや有休休暇の取得促進などの内容を盛り込んだ「働き方改革関連法」を2018年に成立させ、2019年4月から適用されています。 働き方改革の取り組みを促進 …

【社労士が解説】なぜ今「同一労働同一賃金」なのか?法改正の背景にある課題とは?

大企業は2020年から、中小企業は2021年からスタートする「同一労働同一賃金」。2018年6月に成立した「働き方改革関連法」によって、あらためて国を挙げてこの問題に取り組むことが決まりました。 この …

R6年度 キャリアアップ助成金拡充! 改正ポイント解説

非正規雇用の労働者の正社員化などのキャリアアップを行った事業主に助成されるキャリアアップ助成金の正社員化コースは、令和5年11月29日以降制度が拡充されます。 この記事ではキャリアアップ助成金の概要や …

社会保険適用拡大をパート・アルバイトの働き方を見直すキッカケに――2022年10月施行、一部の短時間労働者の社会保険加入を義務化

2022年10月より、一部の短時間労働者(パート・アルバイトなど)の社会保険加入が義務化されました。従業員数「501人以上」の企業には、すでに適用されている施策ですが、今回、新たに従業員数「500人以 …